内容・概要
軍隊が「エコ競争」を牽引することが、国民経済の成長と、高度の福祉を、ともに約束する!
●著者より
南極大陸の氷が薄くなった理由が、大気中に温室化ガスが増えたせいなのか、地球誕生以来のありふれた気候変動にすぎないのかは、ハッキリしません。
しかし、両極地方で氷が解けていることは観測できる事実であり、各国は、安全保障政策担当者を先頭に、たとえば北極海が「地中海」化した暁の、最善な国益確保策についての研究をスタートしています。
これは、北日本の開発・改造にも直結する契機のはずですが、わが政府には何の腹案もなさそうです。
米国海軍と米国陸軍は、同時にまた、化石燃料に依存しない装備体系に、大胆に変貌しようともしています。
オバマ政権が、「温室化ガス排出削減」にそれほど積極的でないことと、米軍を牽引役とした「脱石油」の大戦略にドライブをかけていることとは、矛盾しません。
米国は、大企業病の「ビッグ3」などにではなく、先端軍需企業に革命的な省エネ運送機械を実現させ、軍事とエコ技術での両面世界覇権を予定しているのです。
しかるに日本の政策プランナーで、この意味を把握している人はほとんどいないようです。
もし中東から黄河流域にかけての広大な地域で今のペースで砂漠化が進行すれば、核兵器を有する数ヵ国が「失敗国家」の騒乱に巻き込まれて、大産油地帯を戦場とする核戦争や核テロすら起きるでしょう。だから各国は、「気候変動対処」の名目で、最悪事態に備えた国家戦略を立てているのです。わが国だけが、「石油1リットル1万円時代」に、何の備えもしていない!
本書は、軍事無知ゆえにエコ技術革命に関して無策を極める日本政府になりかわって、どうしたら日本人の高度な技術ポテンシャルを、経済成長と将来福祉に役立てることができるか、具体的・詳細に提示します。
本書から学べば、日本人は、気候変動にともなう人類の危機をも救済できるでしょう。まずそれには、軍隊の「グリーン化競争」で諸外国に「敗戦」してはなりません。その先にこそ、この閉塞感だらけの日本社会の大復活が見えてきます。
目次
はじめに
第1章 「脱」石油化軍隊の道を歩み始めた米軍
第2章 石油にこだわる米空軍、原子力に走る米海軍
第3章 北極海海戦はバイオ燃料とスーパーコンピューターで
第4章 中東核戦争の可能性と中国の動き
第5章 北京はもはや水爆ミサイルを発射できない!
第6章 地球温暖化はまやかし……だが砂漠戦争はホンモノだ!
第7章 UAV(無人機)なら訓練燃料いらず
第8章 日本列島〈エネルギー安全保障〉改造論
第9章 札幌「遷都」とリニアモーター新幹線
第10章 日本と世界を生き返らせるグリーン・テクノロジーを開発しよう!
むすびにかえて ――〈核武装どころじゃないですよ!〉――
兵頭 二十八(ひょうどう・にそはち)
1960年長野市生まれ。父は長野市消防局員。
1982年1月から84年1月まで陸上自衛隊。(原隊は第2戦車大隊。今は連隊となっている。)
1984年4月から神奈川大学外国語学部英語英文科。
1988年4月から東京工業大学理工学研究科社会工学専攻博士前期課程。(所属は江頭淳夫研究室。)
1990年から92年まで、(株)戦車マガジン。(現在の「デルタ出版」。)
1993年から短期間、『ゴルゴ13』の原案作者の一人だった。
1995年に最初の自著『日本の陸軍歩兵兵器』を上梓。
1996年から「軍学者」として論壇誌に書くようになる。
以降の著書として、『技術戦としての第二次大戦』(別宮暖朗氏との共著・PHP研究所)、『「新しい戦争」を日本はどう生き抜くか』(ちくま新書)、『属国の防衛革命』(太田述正氏との共著・光人社)、『予言 日支宗教戦争』(並木書房)など多数。
テーマが本書に関連する既著としては、『「自衛隊」無人化計画――あんしん・救国のミリタリー財政出動』(PHP研究所)、『もはやSFではない無人機とロボット兵器――エコ軍備の最前線』(並木書房)、および『ヘクトパスカルズ』(劇画原作・文藝春秋)がある。
著者既刊
『もはやSFではない無人機とロボット兵器―エコ軍備の最前線』(並木書房、2009年12月新刊)
『「自衛隊」無人化計画』(PHP研究所、本体1300円、並製、177ページ、2009年9月刊)
『近代未満の軍人たち』(光人社、本体1700円、並製、217ページ、2009年9月刊)